しつけをどう定義するかで、伝え方は大きく変わります
しつけの相談の中では、「しつけとは、やってはいけないことを叱ること」と考えている飼い主さまに多く出会います。けれど、この認識のまま進めると、犬の行動を変える方法も、飼い主さまへの伝え方も、どうしても苦しい方向へずれていきやすくなります。
まず共有したいのは、しつけには大きく2つの役割があるということです。ひとつは、人に迷惑をかけないようにマナーを教えること。もうひとつは、犬自身の安全や健康を守るためのルールを教えることです。つまり、しつけは本来、人と犬がストレスなく、穏やかに暮らしていくための土台づくりです。
しつけは「叱ること」ではありません
飼い主さまが「いくら叱っても直らない」と話されるとき、その背景には、しつけの定義そのもののずれがあることが少なくありません。叱ることを中心に考えてしまうと、何ができるようになれば暮らしやすいのか、どんな環境を整えれば犬が行動しやすくなるのか、という視点が抜け落ちやすくなります。
大切なのは、そこをやさしく整えることです。叱るか叱らないかの話にとどまらず、何のために練習するのか、どうすれば犬も飼い主さまも続けやすいかを考える必要があります。
よくある思い込みを、そのままにしない
現場では、しつけに関する典型的な思い込みがいくつも見られます。たとえば「犬にはリーダーが必要」「母犬のように押さえつけて叱ればよい」「生まれつきだから仕方ない」「オスワリやオテができれば、しつけができている」といった考え方です。
こうした考え方の中には、古い理論や根拠の乏しい情報に基づいて広まってきたものもあります。トレーナー自身がそこを整理できていないと、飼い主さまの不安を減らすどころか、かえって強めてしまうことがあります。まずはインストラクター側が思い込みを手放し、必要に応じて飼い主さまにも新しい見方を渡せることが大切です。
オスワリやオテは、しつけそのものではありません
犬がオスワリやオテを上手にできると、「よくしつけられている犬ですね」と言われることがあります。もちろん指示語トレーニングには意味がありますが、それ自体がしつけの本体ではありません。あくまで、暮らしやすくするための道具のひとつです。
本当に大切なのは、一緒に生活する中で困りごとが少なく、犬も飼い主さまも落ち着いて過ごせることです。そのために、どんなルールが必要かを整理して、暮らしの中で実践できる形にしていくことが「しつけ」です。
最初に共有しておきたい視点
- しつけは、叱ることではなく暮らしを整えること
- 人へのマナーと、犬自身を守るルールの両方がある
- 思い込みをそのままにすると、伝え方もずれやすい
- 指示語トレーニングは、しつけのための道具のひとつ
- トレーナー自身も情報を更新し続ける必要がある
しつけの基本概念をどう理解しているかは、その後のすべての説明や提案に影響します。だからこそ、最初にここを丁寧に整理することが、トレーナーにとっても飼い主さまにとっても大切です。この土台があると、学習理論や環境設定の話もずっと伝わりやすくなります。
監修・運営
SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。しつけを、犬を従わせるためではなく、人と犬が無理なく暮らしていくための支援として捉え、現場で伝え続けています。
