叱られても、犬には「何がいけないのか」が伝わりません
トイレの場所を教えたいとき、本来伝えたいのは「ここでするとよいことが起きる」という正解です。ペットシーツの上で排せつできたときに褒めて、ごほうびを出すことで、犬はその行動を学びやすくなります。
反対に、「そこじゃダメ」「なんでここでやるの」と叱っても、犬には言葉の意味が伝わりません。結果として学習されるのは、「飼い主の前で排せつすると怖いことが起きる」かもしれません。つまり、伝えたい内容とは別のことを学んでしまうのです。
トイレの失敗を叱ると、隠れてするようになることがあります
トイレではない場所で排せつした犬を大きな声で叱ると、犬はその場面を「この人の前で排せつすると嫌なことが起きる」と受け取ることがあります。すると、飼い主さまに見つからないように隠れて排せつするようになり、かえって問題が複雑になることがあります。
ここで重要なのは、叱ることではなく、正しい場所でできたときの成功体験を増やすことです。間違いを止めるだけでは、正解の行動にはつながりません。
罰は条件がそろわないと成立しません
行動を減らすために罰を使うには、強さ、タイミング、頻度という厳しい条件が必要です。犬がその行動をとった直後、ほぼ3秒以内に、毎回同じように起こらなければ、行動と嫌なことは結びつきにくくなります。
現実には、飼い主さまがこの条件を安定して満たすことはほとんどありません。だから、叱ることで行動を変えようとしても、うまくいかないどころか、別の混乱や不安を生みやすくなります。
信頼関係が崩れるリスクがあります
たとえ条件がそろったとしても、罰が望んだ学習だけを生むとは限りません。恐怖を与えられた動物は、行動をやめるだけでなく、逃げようとしたり、固まったり、攻撃したりすることがあります。犬でも同じで、恐怖の対象が飼い主さまになってしまうことがあります。
そうなると、しつけの目的だったはずの「人と犬が快適に暮らすこと」から遠ざかってしまいます。行動を減らすつもりが、関係そのものを壊してしまっては本末転倒です。
甘噛みに体罰を使うと、本気噛みにつながることがあります
子犬の甘噛みに悩んだ飼い主さまが、頭を押さえつけて叱るなどの対応を続けた結果、犬が手そのものを危険なものとして学習してしまうことがあります。すると、手が近づいただけで防御的に強く噛むようになることがあります。
このとき犬は、「甘噛みはいけない」と理解したわけではありません。ただ、「手が来ると嫌なことが起きる」「だから先に排除しよう」と学習しているだけです。つまり、叱ることで目的と逆の学習が成立してしまっています。
共有しておきたいこと
- 叱ることでは、犬に正解の行動までは伝えられない
- 罰は条件がそろわないと、行動の学習として成立しにくい
- トイレの失敗を叱ると、隠れてする行動に変わることがある
- 体罰や強い叱責は、恐怖や防御行動を強めることがある
- 信頼関係を守るためにも、正解を教えて褒める方向が基本になる
大切なのは、「叱ってはいけません」とだけ覚えることではありません。なぜ叱るとうまくいかないのか、犬に何が学習されてしまうのかを整理し、代わりにどう進めると伝わりやすいのかまで知っておくことが必要です。それが、飼い主さまの不安を減らし、実践につながる考え方になります。
監修・運営
SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。叱責や体罰ではなく、犬と飼い主さまの両方が続けやすい方法を伝えることを大切にしています。
