インストラクターは「犬の先生」ではありません

インストラクターというと、犬に直接トレーニングをして行動を変える人、という印象を持たれやすいかもしれません。ただ、実際の現場では、メインで向き合う相手は犬だけではありません。むしろ、飼い主さまの理解や実践をどう支えるかが、とても大きな比重を占めます。

犬をしつけたり、暮らしを整えたりしていく主体は、あくまで飼い主さまです。インストラクターの役割は、その方法をわかりやすく伝え、無理なく続けられる形へ整えることにあります。

飼い主さまにとっての「よき相談相手」であること

相談に来られる方の多くは、すでに悩みや不安を抱えています。そのときに必要なのは、一緒に途方に暮れることではなく、気持ちに寄り添いながらも、いくつかの見通しや選択肢を示せることです。

上から正しさを押しつけるのではなく、相手の事情や生活をふまえながら、「このご家庭なら、まずはここから始められそうですね」と一緒に整理していける姿勢が、信頼につながりやすくなります。

犬の代弁者であり、翻訳者であること

犬の行動には、その子なりの理由があります。怖い、落ち着かない、どうしてよいかわからない、ある行動をくり返すと楽になる。そうした背景を読み取り、飼い主さまに伝わる言葉へ置き換えることも、インストラクターの大切な役割です。

飼い主さまと一緒になって犬を責めたり、「こうしなさい」と一方的に指示したりするだけでは、かえって関係がこじれることがあります。犬の行動の意味をほどき、飼い主さまが受け取りやすい形で説明することが必要です。

起こりやすい勘違い

  • 知識があるからといって、飼い主さまより上の立場のように振る舞ってしまう
  • 犬への思い入れが強すぎて、飼い主さまを差し置いて犬に接してしまう
  • 正しさを急いで伝えようとして、相手の受け取り方への配慮が薄くなる

信頼は、距離感の取り方でも生まれます

親身になることと、境界をなくすことは同じではありません。信頼されるインストラクターは、犬にも飼い主さまにも敬意を持ちながら、適切な距離感を保っています。その距離感があるからこそ、落ち着いて状況を見立て、必要な提案ができます。

犬のためを思う気持ちは大切です。ただ、その気持ちが強すぎて飼い主さまを置いていってしまうと、本来の支援から少しずれてしまいます。犬と飼い主さまの間をつなぐ存在であることを、いつも土台に置いておくことが大切です。

信頼されるインストラクターとは、犬をコントロールできる人ではなく、犬と飼い主さまの両方を見ながら、実践できる形に整えて伝えられる人です。知識や技術と同じくらい、伝え方と立ち位置が問われる仕事だといえるでしょう。

監修・運営

SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。犬の行動だけでなく、飼い主さまが実践しやすい形に整えて伝えることを大切にしながら、日々のサポートを行っています。