犬を見ると、飼い主さまの関わり方が見えてくることがあります

トレーニングの現場では、飼い主さまのお話を丁寧に聞くことが大切です。ただ、それと同じくらい大切なのが、犬自身の様子をよく見ることです。言葉では整理されていなくても、犬の行動には日常の関わり方や学習の積み重ねが表れていることがあります。

もちろん、犬の様子だけで決めつけてはいけません。ただ、飼い主さまの言葉と犬の状態の両方を見ていくと、問題の本質に近づきやすくなります。ここでは、現場で見かけやすい3つのケースをもとに、どんな視点で見立てていくかを整理します。

ちょっとしたことで吠える犬

人が近づいた、聞き慣れない音がした、チャイムが鳴った。そのたびにすぐ吠えたり威嚇したりする犬は少なくありません。このケースでは、家にいる間もずっと犬を触っている、吠えたときにすぐ抱き上げる、「大丈夫だよ」となで続ける、という関わり方が背景にあることがあります。

日常的に触られ続けている状態は、犬にとって報酬が出しっぱなしになっていることがあります。すると、自分で落ち着くより、刺激に対してすぐ反応する行動が出やすくなります。ここで大切なのは、飼い主さまを責めることではなく、安心の作り方が「常に触ること」だけになっていないかを一緒に整理することです。

噛む犬と、強く抑え込もうとする関わり方

噛みつきの背景はさまざまですが、後天的に噛む行動が強くなっているケースでは、叩く、怒鳴る、押さえつける、驚かせる、といった強い関わりが入っていることがあります。こうしたやり方は、犬にとって「嫌なこと」であり、自分の身を守るために反撃する行動につながりやすくなります。

一度でも噛むことで相手の手が離れたり、嫌なことが止まったりすると、犬はその行動を学習します。この場合も、単に「噛む犬」と見るのではなく、どういう場面で、何を避けようとしているのかを見る必要があります。古いリーダー論のような考え方が背景にある場合は、まずそこをやわらかくほどくことが必要です。

自由気ままに見える犬

散歩中に飼い主さまを気にせず好きな方へ進む、拾い食いをする、ほかの犬に向かって吠える。こうした犬は「わがまま」と表現されることがありますが、実際には犬が自分で報酬を取り続けているだけ、ということもあります。

行きたい方に行けた、食べたいものを食べられた、吠えたら相手が離れた。このように、犬が自分の行動で結果を得ているとき、そこに飼い主さまの関わりはあまり入っていません。この場合は、犬を抑え込むより、飼い主さまがどこで介入できるか、どこから関係を作り直せるかを一緒に考えることが大切です。

見立てのときに意識したいこと

  • 飼い主さまの言葉と犬の様子が一致しているかを見る
  • 犬が日常の中で、何によって報酬を得ているかを考える
  • 困りごとの背景に、強すぎる関わりか無関心かがないかを見る
  • 犬の行動だけで決めつけず、環境と関わり方まで含めて整理する
  • 責めるのではなく、変えやすいポイントを一緒に見つける

犬はウソをつかない、という言い方は少し強いかもしれませんが、少なくとも日々の体験は行動に表れます。だからこそ、トレーナーは飼い主さまの言葉を大切にしながら、犬の様子も同じ重さで見る必要があります。その両方を見てはじめて、何を整えると変化しやすいかが見えてきます。

監修・運営

SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。犬の行動だけでなく、飼い主さまとの関係や日常の関わり方まで含めて見立てることを大切にしています。