してほしくないことは、体験しなければ学習されにくくなります

犬は体験を通して学ぶ生きものです。言い換えると、体験していないことは学習しようがありません。だからこそ、してほしくないことは「どう叱るか」ではなく、「どう体験させないか」から考える必要があります。

たとえば拾い食いで考えてみると、犬は落ちているものを食べたことで、おいしいものを得たかもしれません。さらに、そのあと飼い主さまが大きな声で構ってくれたなら、それも犬にとっては“よいこと”として学習されることがあります。この時点で、拾い食いはすでに1回分の成功体験になっています。

ごみ箱あさりも、体験させるほど強くなります

ごみ箱を何度もあさってしまう場合も同じです。「いくら叱ってもやめない」と言うときには、すでにごみ箱をあさる経験を何度も積ませてしまっていることが多いです。ここで必要なのは、追いかけて叱ることではなく、ごみ箱をロック付きにする、犬の届かない場所に移すなど、まず体験できないようにする工夫です。

問題行動を減らしたいのに、行動の練習機会を残してしまうと、犬はそのたびに学習を重ねます。大切なのは、行動が起きた後の対処だけでなく、次に同じことが起きにくい環境へどう変えるかを考えることです。

吠えて追い払う経験も、学習として積み上がります

見知らぬ人や犬に吠えたとき、相手が離れていけば、犬にとっては「嫌なものがいなくなった」という体験になります。すると、その後も同じような場面で吠えやすくなります。これは、吠えること自体に意味があるというより、吠えた結果として嫌なことがなくなった、と犬が学習しているからです。

ここでも大事なのは、ただ叱ることではなく、吠え続ける前に距離を取る、視界を切る、別方向へ動くなど、同じ成功体験を積ませにくくすることです。

要求吠えも、通った経験で強くなります

飼い主さまに向かって吠えたときに、抱っこされたり、なだめてもらえたりすると、「吠えると要求が通る」と学習しやすくなります。飼い主さまは落ち着かせようとしているつもりでも、犬にとっては望んだ結果になっていることがあります。

このようなケースでは、犬が何に反応しているかだけでなく、そのあとに何を得ているかを見ることが大切です。行動の直後に出ている結果を見ないと、対応はずれていきます。

起きたときは、まず止めて、次に起こせないようにする

もちろん、すべてを事前に予測して防ぐことはできません。だからこそ、起きたときの流れも整理しておく必要があります。まずはその行動を続けさせないこと。そのために、音で注意を引く、リードで方向を変えるなど、その場でストップさせる方法を使います。

ただし、ここで大切なのは「叱る」ことではありません。行動を止めるために注意を切り替えるのであって、犬を責めるためではありません。そして止めたあとに、本当に大切なのは、次に同じ行動を起こしにくい状態へ整えることです。

押さえておきたい流れ

  • してほしくない行動を見つけたら、まずその場でストップさせる
  • 犬を責めるのではなく、行動を続けさせないことを優先する
  • 止めたあとに、同じ行動を起こしにくい環境へ変える
  • 拾い食い・ごみ箱あさり・要求吠えは、体験させるほど強くなりやすい
  • 叱るべきなのは犬ではなく、環境を整えきれなかった人側の見直しであることが多い

「犬を叱っても直らない」と感じる場面では、そもそも行動の練習機会を残していないかを見る必要があります。飼い主さまを責めるためではなく、どう整えれば次の体験を変えられるかを一緒に考えることが大切です。それが、結果として犬にも飼い主さまにもやさしい進め方になります。

監修・運営

SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。問題行動を叱って止めるのではなく、体験の積み重ねと環境の整え方から整理することを大切にしています。