この出来事を短く見ると

いつ出張カウンセリングでご自宅に伺った時
どこでマンションの1階のご自宅前
どんな犬人が家に来ると噛んでしまう柴犬
起きたこと吠えながら全力で走ってきて、左足のすねを噛んだ
見立て人が嫌いというより、気になるけれど関わり方がわからない状態
最初の対応無理に触らず、自分から近づいた時だけ静かに関わる

マンションの集合チャイムの時点で、もう吠えていました

出張カウンセリングのご希望でご自宅に伺った時の話です。

マンションの集合チャイムで部屋番号を押して、自動ドアを開けてもらい、最初の角を左に曲がった突き当たりの1階のお宅でした。インターホンから吠えている声が聞こえていたので、「おお、なかなか興奮してるなぁ。」と思いながらご自宅に向かっていました。

その瞬間、柴犬が全力で向かってきました

一つめの角を左に曲がったその時、一番奥の部屋のドアが開いて、飼い主さまが顔を出して「こちらです!」と教えてくれました。「あ、あそこのお部屋ね。ありがとうございます!」と思ったその瞬間です。

15キロはあるだろう大きい柴犬が、けたたましく吠えながら口を開けてこちらに猛ダッシュしてきました。突き当たりの部屋から、私が今いるところまで約20メートル。全力ダッシュです。

脳がスローモーションになって、覚悟を決めました

ここから私の脳はスローモーションに切り替わりました。柴犬は上下に跳ねながら口を開け、吠えながら近づいてきます。

「噛まれる……。まあしょうがないか。噛まれると痛いんだよな。逃げるとカッコ悪いし、噛まれても痛い仕草はできないし、さあ腹を括って噛まれよう。そしてそれを飼い主さまになぜこうなったのかきちんと聞いて、練習に生かしてもらおう。」と、その時は考えました。

実際には噛まれました。でも、その子はついて来てくれました

左足のすねあたりを噛まれましたが、何事もなかったかのように部屋の方へ「ほら行くよ! 行こ行こ!」と、まるで遊んでいるかのようにして誘導しました。

すると、その子は私の後ろに回り、吠え立てます。でも、ちゃっかりついて来てくれる良い子で、すんなり部屋に戻って、また吠えていました。

本当に人が嫌いな子なら、まず逃げます

実は、本当に人が嫌いな子の第一選択肢は逃げることになることが多いです。ですから、この子のように前に出てくる反応は、ただ「人嫌い」と言ってしまうと少し違うことがあります。

人が少し好きで気になるけれど、どう触れ合ったらよいかわからない子。あるいは、過去に気になって近寄った時に、急に触られた、脅かされた、という経験がある子ほど、このような行動を取ることがあります。

こちらにも反省がありました

ただ、最初に走らせてしまったのは、私の事前確認ミスでもありました。あらかじめ「リードをつけておいてあげてください。その方が怖い思いをしなくてよいので」と伝えておけばよかった、と反省しました。

過去を聞くと、やはりきっかけがありました

飼い主さまに、過去に怖い体験などがなかったかを聞いてみました。すると、自宅に遊びに来た男性に無理やり触られてから吠えるようになったような記憶がある、とのことでした。

最初に勧めたのは「空気のように扱ってくれる人」との練習です

そこで、これからは比較的犬が怖くなく、無理に触ったりしない人、つまり本人を空気のように扱ってくれる人と練習していきましょう、とお伝えしました。犬自らが近寄って来た時だけ、ゆっくり触るような形です。おやつが好きなら、おやつをあげてみることも大事です。

同じ環境で、同じ刺激で、良い報酬をあげていくことで少しずつ慣れていきます。いつもの部屋で、いつもの人が、いつも美味しいものをくれる。そういった体験を積ませていくことです。

慣れてきたら、少しずつ場所を広げていきます

工夫を加えると、部屋の中だけでなく、散歩中などに「いつも同じところで、いつも同じ人が、美味しいおやつをくれる」といった形にも広げていけます。繰り返すことで慣れていきますし、そこからアレンジして少し難しい環境へ移行していくこともできるようになります。

最終的には、なでなでできるようになりました

最終的には、その子をなでなでできるようになりました。とても嬉しかったのを覚えています。

この出来事から伝えたいこと

  • 来客に向かっていく子を、すぐに人嫌いと決めつけないこと
  • 前に出る子には、関わり方がわからない不安が混ざっていることがあること
  • 無理に触らせないことが、慣れるための近道になること
  • 同じ環境、同じ刺激、同じ良い報酬を繰り返していくこと
  • 少しずつ成功体験を積ませると、関わり方は変わっていくこと

監修・運営

SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。来客時の噛みつきは、表面的な激しさだけで判断せず、その子の感情の向きや過去の経験を見ながら、無理のない形で新しい体験に置き換えていくことを大切にしています。

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