このコラムを短く見ると

何を見るか犬の行動だけでなく、飼い主さまの生活や理解の仕方まで見る
何を探るか原因は何か、どこから来ているのか
どう進めるかすぐ答えを出さず、試す材料を作って反応を見る
何を大事にするか犬の気持ちを飼い主に伝え、飼い主の思いを犬に伝えること

犬の行動だけでは、原因は見えません

犬が吠えた、噛んだ、固まった、逃げた。そうした行動だけを見ると、目の前の問題だけを何とかしたくなります。でも、トレーナーとして現場で見ていると、行動そのものは結果であって、原因は別のところにあることが少なくありません。

だから私は、犬の行動を見ながら同時に「この原因は何か」「どこから来ているのか」を探っています。そのために、たくさん質問をします。この行動はいつ起きますか。誰がいる時に起きますか。同じような行動で困っていることは他にありませんか。そうやって情報を重ねていきます。

私が見ているのは、犬30%、飼い主70%です

少し驚かれるかもしれませんが、私が見ているのは犬30%、飼い主70%です。もちろん犬の様子はしっかり見ます。ただ、家庭犬の問題の多くは、犬だけを見ていても整いません。暮らし方、関わり方、困りごとの捉え方、生活の組み方まで見ていく必要があります。

その行動が家族にとって急を要するものなのか、実はそれ以外に先に修正した方がいいことがあるのではないか。この辺りが原因の一つかな、と見ています。目の前の問題だけを急いで動かすより、順番を見誤らないことの方が大切なことも多いです。

会話の中で、飼い主さまの理解の仕方も見ています

質問を重ねる中で見ているのは、情報そのものだけではありません。飼い主さまの話し方や考え方、言語的な理解をする方が得意なのか、映像的な理解の方が得意なのかも見ています。

同じ内容を伝えるにしても、言葉で整理した方が入る方と、具体的な場面をイメージした方が分かりやすい方がいます。だから、伝える言葉は毎回変わります。正しいことを言えば伝わる、ではなく、その人に伝わる言葉に変えることが必要です。

基本的に、私はすぐには答えを出しません

トレーナーならすぐに答えが出ると思われることがありますが、基本的にはすぐに答えは出ません。まずは試す材料を作って、飼い主さまにやってみてもらう。その反応を見て、また考える。そういう積み重ねです。

また、飼い主さまの生活の特性や理解の特性によっては、今その言葉を伝えるとミスリードになると判断することもあります。そういう時は、今は伝えません。言わない方が親切なこともあるからです。

トレーナーが「いい人」になる必要はないと思っています

ここは少し誤解されやすいのですが、トレーナーがいい人になろうとする必要はないと思っています。無理に優しい顔をすることでも、耳ざわりの良いことだけを言うことでもないからです。

飼い主さまが本当に見ているのは、自分の気持ちや、自分にできることを理解してくれているかどうかです。そこが伝わる人が、結果的に信頼されるのだと思います。

トレーナーが見ていること

  • 犬の行動だけでなく、原因がどこから来ているか
  • その問題が家族にとって今どれくらい急ぎか
  • 先に整えた方がよい別の課題がないか
  • 飼い主さまの話し方、考え方、理解の仕方
  • 今伝えるべきことと、まだ伝えない方がよいこと

犬を見る力とは、犬だけを見ることではありません

犬を見る力という言葉は、犬の表情や姿勢を読むことだけに聞こえるかもしれません。でも実際には、犬の気持ちを飼い主さまに伝え、飼い主さまの思いを犬に伝えていくことまで含んでいます。

そのためには、犬の状態を観察することも、飼い主さまの話を深く聞くことも、どちらも必要です。どちらか片方では足りません。犬を理解し、暮らしを整え、伝え方まで考える。その全部がつながって、はじめて現場のトレーニングになります。

監修・運営

SKYWAN! DOG SCHOOL 代表 井原亮。犬の気持ちを飼い主さまへ、飼い主さまの思いを犬へ伝えていくことを、家庭犬のトレーニングで大切にしています。

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