犬の防災|同行避難・備蓄・飼い主同士の共助
一緒に逃げる準備から、避難後の暮らし、交代で世話をする共助まで。地域を問わず、愛犬のために今日からできる備えを考えます。

災害が起きたとき、愛犬を連れてどこへ避難するか。その先で、どうやって生活するか。考えたことはありますか。
フードや水を用意することは大切です。でも、犬の防災は、物をそろえるだけでは十分ではありません。避難先を知り、普段から必要な練習をしておくこと。自分以外の人にも愛犬のことが伝わるようにすること。そして、困ったときに助け合える人とつながっておくことまで含めて考えます。
同行避難と同伴避難は、何が違う?
同行避難は、飼い主がペットと一緒に安全な場所まで避難する行動です。同伴避難は、避難した場所で飼い主がペットを飼養・管理している状態を指します。
注意したいのは、どちらも「犬と同じ部屋で過ごせる」という意味とは限らないことです。同室だけでなく、別室や屋外のスペースで管理する形もあります。「ペットと避難できる」と聞いていても、その先でどう過ごすかまで確認しておきましょう。
- 犬を受け入れる場所は屋内か、屋外か
- 飼い主と同室か、別のスペースか
- ケージやキャリーは必要か
- 大きさや頭数などの条件があるか
- 食事、排泄、清掃、見守りはどのように行うか
避難所には、犬が苦手な方や動物アレルギーのある方もいます。犬と暮らしている人も、そうでない人も過ごせるように、施設ごとのルールを確認してください。
一時避難場所と二次避難先。役割を分けて考える
「一時避難場所」「二次避難場所」という呼び方は、全国で同じ意味に統一されているわけではありません。「最初にここへ行って、次に必ずあそこへ行く」と決めつけず、地域の防災マップで名称と役割を確認しましょう。
一時的に集まる場所・危険から命を守る場所
一時集合場所などは、地域の人が集まり状況を確認する場所です。一方、指定緊急避難場所などは、洪水や津波、火災などの危険から命を守るための場所です。役割は地域や災害の種類によって異なり、長期間生活する設備があるとは限りません。犬と移動する経路も含めて調べておきます。
避難生活を送る場所
指定避難所は、自宅で生活できなくなった人が一定期間生活する場所です。犬の受け入れ場所、ケージの必要性、衛生管理などのルールを確認しましょう。
その後に移る二次避難先
避難生活が長引く場合などには、ホテル・旅館等へ移ることがあります。また、福祉避難所を二次的な避難所と位置づける地域もあります。最初の避難先で犬を受け入れてもらえても、移動先で同じ条件とは限りません。犬と移動できるか、どこで過ごせるかを改めて確認する必要があります。
自宅と周囲の安全が確保されていれば、犬と在宅避難を続ける選択肢もあります。安全な親戚や知人の家も含め、行き先を複数考えておきましょう。ただし、倒壊・火災・浸水などの危険がある場所に、犬がいるからととどまることは避けてください。まず飼い主さん自身の安全を確保することが必要です。
支援が届くまでの生活を支える備蓄
救助や支援物資がいつ届くかは、災害の規模や道路の状況によって変わります。「3日たてば救助が来る」「長くても7日あれば大丈夫」とは決めつけられません。救助活動が始まることと、自分のいる場所に犬用の物資が届くことも別です。
環境省は、ペットのフードや水を少なくとも5日分、できれば7日分以上備えることを勧めています。療法食など代わりを入手しにくいものは、さらに長期間の備えが必要です。普段の使用量を基に、7日分以上を目安に準備しましょう。
- 食べ慣れたフード・療法食・飲み水
- 1日の使用量から必要量を計算します。食事は小分けにして期限を管理し、水はこぼれる分も考えて準備します。犬の飲み水は、人用とは別に用意してください。
- 常用薬・服薬の記録
- 備蓄できる量や保管方法を、かかりつけの獣医師に相談します。薬の名前、与え方、必要な量を紙にも残しておきましょう。
- 首輪・リード・ハーネス、キャリー・クレート
- 移動中の逃走を防ぎ、避難先で居場所を確保するために用意します。サイズや金具の傷みを確認し、普段から使って慣れておきます。
- 食器・水入れ
- 持ち運びやすく、洗いやすいものを準備します。普段と違う器でも食べたり飲んだりできるか確認しておきましょう。
- ペットシーツ・便袋・防臭袋・ごみ袋
- 排泄物を適切に処理できるよう、普段の消費量に余裕を足して準備します。使い慣れたトイレ用品を優先しましょう。
- ペーパー類・犬に使えるウェットティッシュ・タオル
- 水が十分に使えない場合の清掃や体拭きに役立ちます。敷物や毛布、必要に応じてブラシなども用意します。
- 使い慣れた敷物・おもちゃ、季節に応じた用品
- 普段のにおいがついたものを、落ち着く手がかりにします。暑さ・寒さへの備えは、電源や冷凍庫が使えない場合も考えて選びます。
- 迷子札・写真・健康情報
- 犬の写真、飼い主と一緒の写真、予防接種記録、病歴やアレルギーの情報をまとめます。紙とスマートフォンの両方に保存し、紙は防水袋に入れます。
環境省や自治体も、食料・水・薬のほか、移動用品、排泄用品、健康記録などの準備を案内しています。
すべてを一度に運ぼうとして避難が遅れないよう、「すぐ持ち出すもの」と「自宅で備蓄するもの」を分けておきましょう。飼い主さん自身の水・食料・薬・携帯トイレ・照明・モバイルバッテリーなども必要です。犬と荷物を一緒に運べるか、実際に試しておくことも大切です。
リードと首輪は、予備を含めて2セット
SKYWANから特にお伝えしたいのは、リードと首輪を2セット用意しておくことです。
いつも使っているものが見つからない、破損した、取り出せない場所にある。そんなとき、予備があれば対応しやすくなります。1セットは普段使うもの、もう1セットは防災用品と一緒に保管しておきましょう。
予備はしまったままにせず、ときどきサイズと状態を確認してください。子犬の成長や体格の変化で、以前は合っていた首輪が使えなくなることもあります。2セットとは、予備を確保するという意味です。使用時は体に合った装着方法を確かめましょう。
首輪には連絡先が分かる迷子札をつけ、マイクロチップの登録情報も最新にしておきます。首輪をしているだけでは、飼い主を特定できないことがあります。
飼い主同士で支え合う「共助」も防災
物資を受け取りに行く、家族の対応をする、体調を崩す、休息を取る。災害時は、飼い主がずっと犬のそばにいられるとは限りません。
そのときに役立つのが、飼い主同士で協力する「共助」です。避難先のルールに沿って見守りや清掃、情報共有を分担し、交代で犬の世話をする方法もあります。
散歩仲間や近所の飼い主さん、犬の保育園・しつけ教室などで、普段からつながりを作っておくことも備えになります。
ただし、犬を一か所に集めて自由に遊ばせるということではありません。それぞれの犬の居場所と距離を確保し、世話の内容を確認しておきます。
- 飼い主の確認なしに、食べ物や薬を与えない
- 勝手にケージを開けたり、犬を連れ出したりしない
- 散歩や移動は、その犬を安全に扱える人が担当する
- 食事・排泄・服薬などを記録して引き継ぐ
- 苦手なこと、アレルギー、逃げやすい場面を共有する
全員が同じことをできる必要はありません。犬を扱うことが難しくても、清掃や物資の整理、情報の確認などで協力できます。一人で抱え込まず、できることを持ち寄る。その関係づくりも防災です。
やむを得ず犬と離れる場合に備え、情報を残す
基本は、犬と一緒に安全な場所へ避難することです。外出中に災害が起きたときの連絡先や、犬の世話を頼める相手を普段から相談しておきましょう。
それでも、危険が迫って一緒に連れ出せない、外出先から戻れない状況は考えられます。そのときに備えて、SKYWANでは救助する人が犬の存在と扱い方を把握できる情報シートを準備することを提案します。自治体でも、家にペットがいることを知らせるレスキューステッカーが紹介されています。
愛犬の情報シートに書いておくこと
- 犬の名前、頭数、写真、犬種、年齢、体格
- 犬がいる部屋や場所、最後に確認した日時
- 飼い主・家族・緊急連絡先
- 簡単な性格、触られるのが苦手な場所、抱っこの可否、噛む可能性
- 持病、アレルギー、食べさせてはいけないもの
- 薬の名前、与え方、最後に与えた日時
- かかりつけ動物病院の名前と電話番号
- 通っているトリミングサロン、しつけ教室、犬の保育園などの名前と電話番号
- リード、キャリー、フード、水、薬の保管場所
性格は「怖がり」「おとなしい」だけでなく、「知らない人が急に触ると口が出る」「抱っこが苦手」「名前を呼んで少し待つと近づける」など、接し方が分かるように書くと役立ちます。
やむを得ず犬を残す場合は、安全にできる範囲で、入口などの分かりやすい場所に犬がいること、連絡先、情報シートの置き場所を掲示します。健康情報などをむやみに外へ公開せず、救助する人が確認できる形を考えましょう。犬を連れ出した後は、掲示も更新します。
貼り紙をしただけで、救助依頼が届くわけではありません。自治体の災害窓口や動物救護の相談先にも、犬が残っていることを伝えてください。通っている施設も被災している可能性があり、施設名の記載は救助や預かりを保証するものではありません。
犬を放して逃がしたり、危険な建物へ無理に戻ったりせず、自治体や救助担当者の指示に従ってください。この情報シートは、交代で世話をするときの引き継ぎにも使えます。
クレートと、人に預けることに慣れておく
防災用品を用意していても、犬がクレートに入れない、家族以外の人が触れない状態では、移動や避難先での世話に困ることがあります。クレートに入ることと、ほかの人に世話をしてもらうことを、普段の暮らしの中で練習しておきましょう。
クレートは、安心して休める場所にする
災害の日に初めてクレートへ入れるのではなく、日頃から部屋に置き、自分から入れるようにしておきます。中でフードを食べる、短い時間休むなど、良い経験と結びつけていきましょう。
落ち着いて入れるようになったら、扉を短時間閉める、飼い主が少し離れるなど、一つずつ練習します。怖がっているのに長時間閉じ込めて慣れさせようとせず、その犬が安心して過ごせる段階から進めます。クレートに入れることだけでなく、中で休めることを目指します。
家族以外の人に触れてもらい、短時間から預かってもらう
信頼できる人にリードを持ってもらう、体にやさしく触れてもらう、食事や身の回りの世話をしてもらう。こうした経験も、災害への備えになります。
まずは飼い主がそばにいる状態から始め、犬の様子を見ながら、短時間だけ預かってもらう経験へつなげます。知人や家族、犬の保育園、しつけ教室など、安心して相談できる相手と取り組んでください。
嫌がる犬を無理に触らせたり、いきなり長時間預けたりする必要はありません。逃げる、体を固くするなどの様子があれば距離や時間を見直し、噛むおそれがある場合は無理をせず専門家に相談しましょう。
目指すのは、誰にでも触らせる犬にすることではありません。飼い主が一時的に世話をできないときにも、ほかの人から必要な助けを受けられるよう、選択肢を増やしておくことです。
環境省も、普段のしつけや健康管理、キャリー・ケージに慣れておくことを、災害への備えとして挙げています。
愛犬の防災は、いつもの暮らしから
どこへ一緒に逃げるか。避難した後、どう暮らすか。自分が世話をできないとき、誰に何を伝えるか。家族や身近な飼い主さんと、一度話してみてください。
フードや水をそろえることも、クレートで休む練習も、人に預かってもらう経験も、飼い主同士で助け合う関係づくりも、愛犬を守るための備えです。
犬の防災は、特別な日にだけ考えるものではありません。いつもの暮らしの中で準備を重ねておくことが、いざというときの支えになります。
家庭犬のしつけと暮らしのコラム