犬の保育園としつけは別?預ける時間に育てたいこと

とあるSNSで、犬の保育園・幼稚園について質問してみました。
寄せられた回答を見ると、「保育園や幼稚園は、犬を預けて遊ばせるところ。しつけは、それとは別に行うもの」と考えている方が多いように感じました。
犬同士で楽しそうに遊ぶ写真や動画を見れば、そうしたイメージを持つのも自然なことです。ただ、犬は遊んでいる間にも、人や犬との関わり方を学んでいます。その時間にどのような経験をするかは、家庭での暮らしにもつながります。
では、愛犬を預ける時間に、私たちは何を育てていくべきなのでしょうか。
寄せられた意見の中には、「預かりは『保管』、トレーニングは『訓練』という登録区分なのだから、サービスが違うのは当然」というものもありました。
ただ、飼い主さんが愛犬を預けるときに求めているのは、どのようなことでしょうか。楽しく過ごしてほしい、安全に見ていてほしい、ほかの犬に慣れてほしい。その期待に応えるには、預かる側にどのような能力が必要なのか。私が考えたいのは、そこです。
犬を扱う仕事であれば、提供するサービスに応じた知識と技術を持っていることが大前提です。預かるだけでも、衛生管理や安全な扱い方、体調の変化に気づくための知識などが欠かせません。
さらに、犬同士を遊ばせるのであれば、行動の意味を理解し、相性を判断し、一頭一頭の性格や状態に合わせて関わり方を調整する技術が必要です。これは感覚だけで判断できるものではありません。専門的な知識と、さまざまな犬に関わってきた豊富な経験が必要だと考えています。
追いかけ合っている犬たちは、お互いに楽しんでいるのか。一方が逃げたいと思っていないか。興奮が高まりすぎていないか。遊びを続けるのか、距離を取るのか、休ませるのか。その判断も、預かる側の仕事です。
そして、犬は遊んでいる間にも学んでいます。人や犬にどう近づくか、興奮したときにどう行動するか。そこで繰り返した経験が、普段の行動にもつながっていきます。
だからこそ、犬を遊ばせる時間にも、しつけに関わる知識と技術が必要なのです。
遊ぶだけの時間で、何を身につけているでしょうか
ただ犬同士で遊ぶ時間だけにしてしまうと、その犬がどのような経験をしたかによって、例えば次のような変化が考えられます。
- ① 犬を見ると興奮する。ほかの犬がいると「遊べる」と期待し、近づこうとしたり、落ち着きにくくなったりする。
- ② 犬を見ると怖くなる。追いかけられるなど、その犬にとって負担の大きい経験が重なり、ほかの犬を避けたり、警戒したりするようになる。
- ③ 特に変化が見られない。遊んで過ごしていても、普段の行動には目立った変化がない。
この3つだけに分けられるわけではありませんが、①や②のような変化が起きると、散歩で犬とすれ違うときなどに、飼い主さんが対応に苦労することがあります。楽しく過ごしてほしいと思って預けた時間が、家庭での困りごとにつながってしまっては、本来の期待とは違ってしまいます。
ほかの犬がいても、平常心でいられること
大切なのは、ほかの犬がいても平常心でいられることです。犬がいるたびに遊ばなければならないわけではありません。同じ空間に犬がいても、落ち着いて過ごしたり、人の声に耳を傾けたりできることが、日々の暮らしではとても大切になります。
そのためには、預かっている間に遊ぶだけでなく、お友達の犬がいる状況でも、人に集中し、指示を聞いて行動する練習を取り入れる必要があります。
最初から犬のすぐそばで難しいことを求めるのではなく、その犬が落ち着ける距離や環境から始めます。名前を呼ばれたら人を見る、呼ばれたら戻る、簡単な指示に応じる。そうした経験を良い印象と結びつけながら、少しずつ積み重ねていきます。
犬と遊べることに加えて、犬がいても人と関われること。その両方を育てることが、家庭での暮らしにつながると考えています。
預ける時間に育てたいのは、犬同士で遊べることだけではありません。人や犬と安心して過ごせること、興奮したあとに落ち着けること、遊ばずに休むこともできること。その犬に合った経験を積み重ね、暮らしの中で安心して過ごせる場面を増やしていくことです。
保育園で楽しく過ごすことは大切です。そのうえで、どのような経験を重ね、家庭での暮らしにつなげていくのか。そこまで考えて関わることが、犬の保育園に必要な専門性だと私は考えています。
家庭犬のしつけと暮らしのコラム